事例紹介

神経症状を残す後遺障害について,67歳まで,労働能力の喪失が認められた

1 事案の概要

依頼者は,本件事故当時,26歳の男性であり,原動機付自転車を運転して直進走行中,対向車線から右折してきた加害自動車に衝突され,左膝前十字靭帯損傷(完全断裂)等の傷害を負いました。
なお,依頼者は,本件事故以前から,左膝前十字靭帯損傷(部分断裂)の既往障害がありました。
依頼者は,靭帯再建手術等,約1年間の治療を受けましたが,慢性的な左膝の痛みが残存し,局部に頑固な神経症状を残すものとして,後遺障害等級12級13号に該当すると認定されていました。
 
2 訴訟前の交渉

依頼者は,相談時,相手方保険会社から,次のとおり,約1080万円の損害賠償の提示を受けていました。
 
【損害賠償の提示】
逸失利益     131万円​
       (自賠責基準)
後遺障害慰謝料   93万円
       (自賠責基準)
過失相殺       10%
合計      1080万円
(うち既払金740万円)
 
当事務所は,本件事故について,依頼者から委任を受け,相手方保険会社との間で,交渉を始めましたが,相手方保険会社が,損害賠償額を増額しなかったため,訴訟を提起するに至りました。
 
3 訴訟の結果

当事務所は,訴訟において,依頼者の逸失利益の算定について,労働能力喪失期間が,67歳までの40年間である旨を主張しました。
これに対して,相手方は,労働能力喪失期間は,10年間であると反論してきました。
また,相手方は,本件事故後の症状は,事故前の左膝前十字靭帯損傷に起因するものであるとして,本件事故との因果関係を否定ないし素因減額を主張してきました。
そこで,当事務所は,依頼者のカルテ等の医療記録の精査だけでなく,依頼者の主治医との面談による症状の聞き取り調査や主治医に対する証人尋問等,徹底して,依頼者の症状が本件事故に起因するものであり,また,一生涯にわたって残存することを主張立証しました。
その結果,裁判所は,次のとおり,素因減額をされたものの,依頼者の症状と本件事故との因果関係を認め,かつ,労働能力喪失期間を67歳までとし,逸失利益1265万円を含む,総額約2050万円の損害賠償を認めた内容での和解勧試を行い,同内容での裁判上の和解が成立しました。
 
【和解勧試】
逸失利益    1265万円
(労働能力喪失期間40年間)
後遺障害慰謝料  290万円
過失相殺       10%
素因減額       20%
合計      2050万円
(うち740万円既払い)
 
4 事例の意義

事故以前に既往障害があった場合,事故後の症状と事故との因果関係を否定されたり,大幅な素因減額をされることがあります。
特に,スポーツをされていた方は,半月板の損傷や靭帯損傷等,膝に何らかの障害を抱えていることが多いのではないでしょうか。
また,示談交渉においては,神経症状を残す後遺障害(12級13号)について,労働能力喪失期間が10年間程度に限定されることがほとんどであり,訴訟においても,同様に,労働能力喪失期間を限定することが多くあります。
そのような中,本事例は,神経症状を残す後遺障害(12級13号)について,67歳まで,労働能力の喪失が認められたことに意義があります。
依頼者は,事故当時,26歳であり,労働能力喪失期間は,40年間にもなりました。
医学的知見を総動員した主張立証が功を奏し,適正な賠償が実現した一例です。
 
以上
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