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事例紹介

保険金請求控訴事件

骨子 ダンプカーの衝突火災により運転者が焼死した場合、偶然な事故により死亡したと認めることができないとして、自動車保険金の請求が認められなかった事例
  • 保険金請求控訴事件、福岡高裁平一九(ネ)八七三号、平21・10・2民四部判決、控訴棄却(上告・上告受理申立て)
  • 一審大分地裁平一七(ワ)三七九号、平19・9・28判決
  • 判例時報2059号
担当弁護士 河野美秋、野田部哲也、小川松太郎、高藤基嗣
判決の引用
「(本件ダンプカーの焼損状況と出火原因等について)
ア 控訴人らは、出火場所は、助手席下の「車体の外部」であり、ヒューズボックスの火花により燃料の軽油が燃えたもので、左側ドアの下に激しく変色した箇所があることからも左ドア付近を出火場所とみるべきであり、消防の見解もこれを裏付けている旨及び試料@等の採取経過はあいまいで、被控訴人主張はこれを裏付ける資料に乏しい旨の主張をする。
イ しかしながら、控訴人らの主張ないし消防の見解は、出火場所を左ドア付近下側とし、燃焼ポンプの配管から噴出した軽油に電気的火花が引火するなどしたとするものであるところ、当審における鑑定人鈴木仁治の鑑定の結果(以下「鈴木鑑定」という。)は、「①本件ダンプカーの燃料の軽油は、火花等で着火する可能性は低いこと、②ディーゼルエンジンは、エンジン稼働によりインジェクションパイプを通じて軽油に圧力をかけて霧状にし、発火させる構造であること、③配線ショート等では、軽油を発火させることはできないこと」の知見、専門的知識を前提として、本件事故について「①焼損状況からの延焼の方向性をみても、ドア内側付近の焼損の痕跡の有無等から、配線のショート火花による引火、焼損が否定されること、②当初の衝突による車両左前面の変形状況も助手席側でも室内側から車外へと燃え拡がったと推定されること、③エンジンのドライブシャフトが脱落してエンジンが停止して、インジェクションポンプも停止し、エンジン周辺の燃焼は軽度で、エンジンルームからの出火は否定されること」等の事実を認定し、消防の見解のような出火の可能性については、電気的火花による軽油による引火は、軽油自体が噴霧状になる状況になかったから、考えられず、試料分析の結果等を踏まえれば、出火原因は、消防の見解と異なり、放火の疑いがあるというものである。
しかるところ、同鑑定が判断の前提とした事実のうちの本件ダンプカーの燃燬状況については、原判決第三、四のとおりであり、助手席ドアの一部に激しい変色がみられる箇所はあるものの、キャビン内部は完全に焼失し、金属部分を残すのみとなっている上、太郎の遺体も左腕が焼失し、助手席側からの発火、燃燬が窺われ、「燃焼タンクへの引火はしていなかった。」旨の乙山の陳述等も、主としてキャビンが燃焼していた趣旨と解されることを考慮すれば、キャビン内部の出火とみるのが自然である。
 控訴人らは、衝突後もインジェクションポンプによる燃料の加圧は持続した趣旨の主張もするが、同鑑定が認めるエンジンの停止は、プーリーの欠損状況等を根拠とするものであるところ、原判決第三、五(2)認定のとおり、エンジンさらにはプーリーの停止が認められるのであるから、軽油の噴霧が形成される状況にはなかったとの同鑑定が前提とした事実にも間違いがあるということはできない。
 また、控訴人らは、試料採取の過程があいまいである旨の主張をするが、≪証拠略≫によれば、同採取は、本件事故後の平成一六年一一月二五日に採取されたもので、試料分析をした株式会社島津総合試験分析センターは、「試料①は濃縮作業をしなくても分析できるもので、プラスチックも混じっていたが、主成分が天ぷら油の成分であったことから、大量に存在しているとの表現をしたが、分析からは容量までは特定できなかったものの、容量ごと存在した可能性が高いといえる。」との説明をしていたこと、株式会社分析センターにも試料①③の分析の依頼がされたが、その分析でも、試料①には高級脂肪酸といわれる動植物油の燃焼により検出される成分が含まれているとの結果が報告されたことが認められるから、同分析結果等が信用性を欠くものということはできない。
 衝突前の放火であれば、走行中に放火の痕跡が残る旨の控訴人らの主張についても、≪証拠略≫の実験結果に照らし、採用することができない。
 また、太郎がシートベルトを着用していたことをもって自殺の可能性を否定することはできず、太郎の遺体の血中一酸化炭素ヘモグロビン濃度が0%であったことは認められるものの、衝突直前に着火したことが推認され、衝突後には窓ガラスなども破損していることからすれば、自ら着火の可能性を否定することはできないというべきである。
 ウ 以上のとおり、鈴木鑑定の鑑定結果は、キャビン内焼失等が太郎の外部からの試料持込みによることを裏付けるものといえるのであり、当審提出の証拠等を総合しても、控訴人らの主張は採用することができない。」

「当審証拠等を総合して検討しても、本件事故が急激かつ偶然な外来の事故により死亡したと認めることはできないのであるから、控訴人らの本件請求は理由がなく、原判決は相当というべきである。」